先日の記事ではSuicaなどのICカードのチャージについて、チャージしたときに全額経費にするのではなく、実際に残高を使ったときに経費にするということについて書きました。

その場合のお金の動きについて、経理上どのような科目を使ったら良いのでしょうか。
普段実務で状況に応じておすすめしている方法についてまとめました。
仮払金などは残高を管理しなければいけない
以前の記事でSuicaにチャージしたときにチャージ金額を仮払金などの科目で計上して、後日チャージ残高を使った時点で旅費交通費などの経費の科目に振り替えていく方法に触れました。
チャージしたとき
(借方)仮払金 5,000 / (貸方)現金 5,000
Suica残高を使ったとき
(借方)旅費交通費など 300 / (貸方)仮払金 300
この方法だと、仮払金などの科目(仮払金以外で自社で使っている科目も)でSuica残高を管理するようなイメージです。
実際のSuicaのチャージ残高と会計上の仮払金などの残高とが合っていないとおかしい、ということになります。
会社が管理している現金や会社名義のクレジットカードなどでSuicaのチャージをしている場合にはこの方法となります。
会社のお金が減った分はそれと同じだけ仮払金などを動かさざるを得ないからです。
このチャージ残高(=仮払金などの残高)を会社の経費になるものだけに使っていれば問題は起きません。
Suicaで支払った金額=仮払金を減らす金額、となり、Suicaの残高と仮払金の残高は一致します。
ただ、その中にプライベートでの支払が混ざっているとどうでしょうか。
経費に振り替えることができないので、その分の仮払金が残ってしまうことになります。
これを消すには、プライベート支払分を現金で会社に返金するか、役員貸付金などの科目に振り替えることが必要です(役員貸付金は会社として問題のある科目です)。
精算しないまま、同じようなプライベートの支払が重なっていくと、仮払金の残高は段々と増えてしまい、もはやSuicaのチャージ残高とは合わなくなってしまいます。
「このSuicaは完全に事業用!」という運用が難しく、プライベートの支払が混ざってしまう可能性がある場合は、残高管理が難しくなるといえるでしょう。
役員借入金を使う場合
ここで紹介するのは、社長が個人で持っているICカードを使う方法です。
あえて会社のお金でチャージするのではなく、社長個人のお金でチャージしたICカードを使うのは、仮払金などの残高管理が必須になってくる資産科目を使わないようにしたいからです。
では、具体的にどうするのかというと。
チャージをした時点では、特に仕訳をしません。
社長のお金でチャージをしているので会社のお金が動いているわけではありませんから、あえて会社の仮払金などを計上する必要もないのです。
そして、チャージ残高を交通費として使ったりモノを買ったりしたときなどに次のような仕訳をします。
(借方)旅費交通費など費用科目 1,000 / (貸方)役員借入金 1,000
役員借入金というのは、会社が役員(社長)から借りているお金、つまりは社長がポケットマネーで会社の経費を立て替えているお金です。
同じようにSuica残高で支払った会社の経費を処理していくと、社長が立て替えたお金=役員借入金がたまっていきます。
これを月ごとなど任意のサイクルで会社から社長に精算することが可能です。
(借方)役員借入金 10,000 / (貸方)預金 10,000
精算時にはピッタリの金額でなくても良いので、残高管理の手間を省くことが出来ます。
役員借入金もあまり金額が大きくなるとデメリットがありますが、適宜精算するのであれば問題にはならないと考えます。
会社の現金や預金など正確な残高管理が求められる科目に比べて、ある程度柔軟に扱うことができるので、おすすめしています。
クラウド会計上の動き
前述のやり方をマネーフォワードなどのクラウド会計で反映する場合、どのようにしたら良いでしょうか。
モバイルSuicaをクラウド会計に連動すると、Suicaで支払った取引をすべて読み込むことが出来ます。
すべての取引を読み込むと、その中にはプライベートでの支払などが含まれている可能性があります。
読み込むだけでは即座に会計に登録されるわけではないので、登録する前にプライベートでの支払が混ざっていないかチェックしましょう。
これらの要らない取引を読み込んだ取引の一覧から取り除いてやって、登録をします。
また、チャージしたときの取引は仕訳をしませんので、チャージ時の取引も除外します。
会社の経費になるものだけをピックアップして登録してあげるイメージです。
登録する際に増減する科目は決済手段に合わせて自分で設定することができます。
仮払金方式でいく場合は「仮払金」、役員借入金方式でいく場合は「役員借入金」の科目を設定しましょう。
まとめ
Suicaを使った取引の経理について、比較的規模の大きくない会社やスモールビジネスを想定しておすすめのやり方を紹介しました。
ICカードを事業専用として厳密に運用することが難しい場合は、必ずしも残高をきっちり合わせる必要のない科目を使うのがおすすめです。
会社を前提にしましたが、個人事業の場合は「事業主借」という科目を使い、これも実地の残高と合わせるという発想ではないので、役員借入金と同様の扱いとなります。
