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安い顧問料で税理士に顧問を頼むと起こりがちなこととは?

格安の顧問料で税理士と契約されていたお客様が、顧問変更で私と顧問契約してくださることがあります。

大体、格安でのサービスで物足りなさを感じて新たに税理士を探されるパターンが多いです。

顧問を開始するとなると以前の会計の内容や申告書類を確認するところから始まるのですが、残念ながら「格安でありながらクオリティが高い」というのは目にしたことがありません。

顧問料が安すぎると起こるかもしれないことについて、私の見聞きした範囲からまとめてみました。

目次

安くするためにかける時間が削られる

税理士の仕事は基本的にはそこまで多くの道具を必要とするわけではありません。

製造業とは違って、材料の仕入れがあるわけでもありません(知識の仕入れは必要ですが)。

パソコンと税務・会計ソフトがあれば最低限の顧問業務はできるように思います。

では、お客様に提供するサービスにかける必須のコストは何かというと、それは時間です。

お客様からいただく質問に回答したり調べたりする時間、会計データや資料をチェックする時間、記帳代行をするのであれば会計入力をする時間、お客様と面談する時間、申告書を作成するだけでなく間違いがないか再度チェックする時間…。

お客様とコミュニケーションを取り、疑問や質問に対応しながら一定のクオリティを保って日々の顧問業務や申告を行うとなると時間がかかります。

決して「時間をかければかけるだけクオリティが上がる」と言っているわけではありません。

効率的ではないやり方で時間ばかりかけて提供されるサービスは良くない、というのはそれはそれでこわいことです。

ただ、やはり一定以上のクオリティを保つためにはそれなりに時間をかける必要があります。

格安の顧問料でサービスを提供しながら収入を増やすとしたら、時間は有限ですのでお客様1件あたりにかける時間は必然的に減ることでしょう。

では、安い顧問料で税理士と契約して少ない時間で仕事をしてもらうとどのようなことが起こると考えられるでしょうか。

面談や質問対応を削って時間を減らす

契約上の面談の頻度を減らす

お客様に対応する時間を減らす単純な方法は、お客様に対応しないことです(!)。

なんだそれは、と言われそうですが、お客様の要望に応じて面談の頻度と料金のバランスで安くするということは実際に行われています。

契約上1年に何回の面談をするかの設定によって年間の顧問料が変わる、という仕組みは良く見られるものです。

1年間毎月面談を行うのと比べると、隔月で6回→3ヶ月ごと4回→半年ごと2回→年に1回と減っていくにつれ、面談そのものの時間や面談に向けた資料作成の時間などが減ります。

私が見聞きした限りでは、年間20万円~30万円という格安で顧問契約をされていたお客様は大体、年に1回、申告のために面談するという形が多いようでした。

この年に1回、というのは個人的には注意が必要だと考えています。

一見コスパが良いようですが、「申告書を作成してもらって電子申告してもらう」という範囲以上のサービスやメリットを取りこぼす可能性が高くなるからです(後述します)。

契約通りに対応されないことも?

年に1回という契約で実際に年に1回面談が行われている限りはそれは契約通りということですが、実際には毎月の契約であったとしても当初の約束通りの頻度で面談が行われず、スキップされるということもありえます(安く多く顧問を受けて、いつも忙しい状態だと起こりがち)。

また、税理士に質問をしてもなかなか対応してもらえなかったという声も聞きます。

顧問契約をする、ということは基本的には「随時質問対応」を掲げていることがほとんどだと思います。

ただし、1件のお客様あたりに時間がかけられない状況にある場合、質問を受けても他に期限が迫っている仕事を優先して後回しにしたり、そのままスルーしてしまうということもあるでしょう。

お客様からしたら「話が違う」ということになります。

役に立つ検討がされていないかもしれない

前述した、年に1回の面談頻度に関わる話です。

税務の世界では、申告するにあたって複数の方法が認められていて、どの方法を使うかによって支払う税額に影響するものがあります。

また、利益が出る状況では適切な節税を検討したいところです。

このようなお客様に有利な方法について考えるためには、年間を通じた数字の把握とお客様との話し合いを通して検討をする必要があります。

事業の状況によって、やる必要があるのかないのか、有利になるのか不利になるのか、などが変化するからです。

1年に複数回、決算の予測も含めた面談を行っていれば、それだけ現在の状況から将来の数値を予想して対策を検討するタイミングを持つことが出来ます。

ですが、年に1回申告のために面談する・1年分まとめて処理をするというやり方だと、「もう検討したり実行するには遅い」「そもそも検討すらされない(したくてもできない)」ということが起こります。

具体的な例で言うと、消費税の計算方法について期末までに届出書を出しておきさえすれば、翌期の消費税の支払額が数十万円安くなっていた、ということがありました。

本当は税理士と定期的に打合せをして実行していれば実現できていたかもしれない税額メリットを、顧問料の安さを優先したがゆえに取りこぼしてしまうことがあるのです。

簡易的な処理で済まされているかもしれない

税理士が関わって日々の経理をチェックさせてもらいながら、最終的に決算申告するとなると、それは適当なものであってはいけないと思っています。

正確さはさておき、やろうと思えば自分でも会計入力して申告することもできるところをプロとして関与するわけですから、クオリティが上がっていなければ意味がありません。

しかし、非常に格安な料金でやっている場合、時間はかけていられませんので、処理が適当になったり「えいやっ」になっていたりすることがあるようです。

  • 元の資料を確認しないで、推測で処理する。
  • お客様に内容確認する時間を省くために、本当に経費になるものか怪しいレシートまですべて経費に計上するor説明なく独断で経費を除外していく。
  • 期をまたいだ取引を確認せず、入出金状況だけで処理する(売上や経費の計上漏れなどが起こる)。
  • 摘要(取引の相手先や内容を書くコメントのようなもの)がきちんと書かれていなかったり、通帳の記帳内容そのままだったりして、内容が分からない。
  • 税額に関係なければ問題ない、と言わんばかりに申告書の記載欄のあちこちが空欄だったり、科目内訳書がスカスカだったりする。

このような処理が常態化すると、会計や申告書類の正確性は損なわれます。

税務調査で指摘されるポイントが増えてしまったり、税額に関係がないとしても金融機関など外部に見せる書類が不正確だと信用の低下につながるおそれがあります。

お客様側が「申告さえしてくれればとりあえずOK」というスタンスだとこうした質の低い処理がされている状況に気づかないパターンが多いのではないでしょうか。

まとめ

非常に安い顧問料の場合に起きうるかもしれないことについて書いてみました。

一部極端に見えることも書きましたが、ひとつひとつは見聞きした例です。

顧問料をできるだけ安く!を追求しようとすると、必要なクオリティが得られない危険性があります。

いくら安くても必要な対策が検討されなかったり、作成してもらった書類が不正確だと本末転倒です。

個人的には非常に格安の顧問料で税理士と契約するのは、それなりのサービスになってしまう恐れがあることを本当の意味で割り切ることができる方に限られるのかなと思います。

私の場合ですが、スタンダードなプランでは3ヶ月に1回の面談頻度ですが、会計処理と資料のチェックは基本毎月です。

面談では直近までの数字の状況から決算期末までの予測数値をお客様と共有し、打合せを行います。

私は顧問をさせていただく以上は一定以上のクオリティを提供したいので、料金は激安ではありませんが、お客様のために意義ある時間を使ってサービスをしていくというスタンスです。

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