電車やバスに乗るとき、あるいは買い物の支払い手段として便利なSuicaなどのICカード。
Suicaに3,000円など残高をチャージしたタイミングで、3,000円の「旅費交通費」という経費で経理しているパターンがあります。
非常に簡単な方法ですが、正しくありませんし、いくつかのリスクがあります。
この記事ではSuicaの利用を経費にするときの注意点についてまとめていきます。
経費にするタイミングを間違っている
本来、チャージをした時点ではSuicaという決済手段の残高を増やしたにすぎず、経費にはなりません。
その残高を使って電車に乗ったりモノを買ったりした時点で初めて経費として計上することができます。
なので、チャージをした段階では「仮払金」や「前払金」などの資産の科目として計上しておいて、実際に使ったときに経費科目に振り替えるなどする必要があります。
チャージしたときに全額を経費にしてしまうと、実際に使うときよりも前倒しで経費にしてしまうことになるので、タイミングが間違っているということになります。
これは、特に決算期末を考えると問題です。
月末にぴったりSuicaの残高が0円になるように使い切っている、というのはあまり無い状況でしょう。
それにも関わらずチャージしたときに全額を経費にしているということは、本当は当期の経費にしてはいけない分まで経費にしてしまっているということになります。
プライベートの支払や交通費以外が混ざっている可能性
SuicaなどのICカードは交通費だけでなく、コンビニや飲食店など色々な場面で支払手段として使うことが出来ます。
チャージしたときにその全額を「旅費交通費」にしたとして、そのすべてが本当に交通費でしょうか?
他の用途にも使っているのであれば、そこは別の適切な科目にしなければいけないところです。
また、本当は手土産のお菓子の購入などにSuicaを使っていた場合、正しい消費税率は軽減税率の8%として経理する必要があります。
全額を旅費交通費にしていると消費税率は10%になっているはずですが、その中に本当は軽減8%の経費が混ざってしまう可能性があるのです。
さらに、プライベートの支払が混ざっていないかどうかも気をつける必要があります。
仕事でもプライベートでも電車での移動が多い場合、仕事移動用のSuicaとプライベート移動用のSuicaを使い分ける…というのはなかなか難しいのではないでしょうか。
そうすると全額経費にしたチャージ金額のうち、いくらかはプライベートでの外出の交通費が混ざっていることでしょう。
プライベートの支払が混ざっていると、本来経費にしてはいけないものを事業上の経費にしてしまっているということになります。
二重計上してしまいがち
また、経費の二重計上のリスクもあります。
チャージしたときに3,000円まるまる旅費交通費として経費を計上したとします。
その3,000円の残高の中で電車に乗ったりするわけですが、前述したようにすべて交通費として使うとは限りません。
ある日、取引先と会う前に東京駅で手土産のお菓子2,000円分をSuicaで購入したとします。
そのとき受け取ったレシートを後日Suicaで払ったことを忘れて、他のレシートと同様に経費として処理してしまいました。
すると、チャージしたときに3,000円経費にしたうえに追加で交際費2,000円を計上することになってしまいます。
うっかり経費を水増ししてしまっている状態です。
使った履歴を個別に取り扱うことが大事
上記のような問題が起こるのを防ぐには、チャージ=全額経費というやり方ではなく、Suicaを使った取引を一つ一つ個別に処理することが大切です。
個別の利用履歴が記載された取引明細をベースに経理するのです。
取引明細はモバイルSuicaであれば、モバイルSuicaの会員メニューサイトやアプリから取得することができます。
カードタイプのSuicaであれば、ICカードリーダーからデータを読み取るか、駅の券売機で紙に印字するかですね。
この取引明細のデータを加工して会計ソフトに読み込むこともできますが、マネーフォワードのようなクラウド会計であれば、モバイルSuicaの口座をクラウド会計に連携設定することで、明細データをそのままクラウド会計に読み込むことが出来るので手間を少なくすることができます。
もちろん、Suicaを使った取引の履歴はすべて連携されてくるので、交通費以外の支払やプライベートでの支払が混ざっている場合は、科目を変更したり登録しないで取り除いてやることが必要です。
ポイントをまとめると
- クラウド会計とモバイルSuicaを連携することで、個々の使用履歴をもれなく読み込む
- 読み込んだ履歴の中に交通費以外に使ったものがあれば、レシートや領収証をベースに正しい科目などに変更する
- さらにプライベートの支払が混ざっていたら、登録対象外にして除外する
ということになるでしょう。
交通費以外の経費を修正したりプライベートの支払を除外するというのが手間で面倒だという場合は、入口(Suicaのそもそもの使い方)を工夫する必要があります。
移動はSuicaで買い物はクレジットカードなど別の支払手段で、と線引きしておけばSuicaの明細はすべて旅費交通費で処理すればよく、シンプルです。
また、プライベート用のICカードを別に用意しておいて、仕事用のSuicaではプライベートの使い方をしないように気をつけることができれば、読み込んだ履歴からプライベート分を除外する手間もなくなります。
支払をフレキシブルにして、あとの経理で手間をかけるか
支払を厳密に工夫して、あとの経理を楽にするか
「支払の自由度」と「経理の手間」はトレードオフの関係にあると言えるかもしれません。
最終的には、自分がどちらを大事にしたいかによって工夫する方向性も変わるでしょう。
